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【書評・ブックレビュー】 『断食芸人』 フランツ・カフカ

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感じない人間には、わからせることはできないのだ。

 人には、承認欲求という感情があり、これには他者承認と自己承認との二つの種類がある。職人やアーティストなど芸を志したり一つのことを追求するような人は、この二つの承認欲求を生きる糧としているのではないだろうか。重要なのは、これら二つの他者承認と自己承認は必ずしも一致しないことである。このジレンマはいい意味では創作活動のモチベーションとなるが、一方では逃れられない孤独を浮き彫りにする。

フランツ・カフカの短編小説『断食芸人』

 『変身』という作品が有名なフランツ・カフカ。この作品は、1922年に文芸誌「新ドイツ展望」にて発表された。その後、「歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族」「最初の悩み」「小さな女」とともに『断食芸人―四つの物語』として、作品集が刊行された。

 

芸の追求と時代の風潮

 断食芸人は、彼の芸そのものを見てくれる人がいないことが不満だった。彼にとっては、食事を摂らないことが外界との接触であり、自分の存在意義であり、芸人としてのプライドになっていたが、見物人は彼の芸を正当には評価しなかった。芸の精度を高めたところで、見物人たちはまったく違う観点で自分を見て評価していたり、興行主は彼の芸を誇張して宣伝したりしていた。それが不満だった。彼は断食による飢えだけではなく、そういったすべてを我慢していた。断食芸人は変わらずに、ずっと同じ芸を追求していったが、周りや時代は変わり、次第に彼は忘れられた存在となっていく。

 

売れなければ認められない

 本当に素晴らしいものを創っている人が評価されないことは現代でも深刻な問題である。たいていの場合には、「本人の努力が足りない」「いくらいいものでも売れなければ意味が無い」などと、実力とは別のところで不当に判断され切捨てられることはよくある。実際のところもそうなのかもしれない。しかし、実際はそうではない場合も多くある。

 断食期間が40日であるというのは、おそらくキリスト教の「四旬節」が元になっているが、この作品では40日という数字に意味があるわけではなく、40日間という区切りで断食するという行為を “芸” とし、それを美化して見物人の関心を煽るということを興行主は行っている。断食芸人自身は、結局死ぬまで断食をしていて、そのプライドを捨てることはなかった。

 世間の評価が実際の社会的な価値基準にはなるが、社会全体がその作品の価値を正当に判断できるほど賢明なのかということも同時に重要なことである。死んでから評価されるのではなく、いま正当に評価されるべき人たちに光をあてることができれば、より多くの人が救われるのかもしれない。

 

足立正生監督が『断食芸人』を映画化

 足立正生監督の映画『断食芸人』が、2016年2月27日から渋谷ユーロスペースより順次公開されている。 現代の日本を舞台にし、ある男がSNSを通して「断食芸人」に仕立て上げられていく、といった内容。 日本赤軍のメンバーとしてパレスチナ革命に参加した足立正生監督が9年ぶりに撮った映画。

 

参考サイト:

『断食芸人』公式サイト 映画.com

足立正生監督、9年ぶり新作はカフカ「断食芸人」を映画化(映画.com)

 

 

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